テクノロジー
製品
リソース
会社
日本語
テクノロジー
製品
ブログ
リソース
会社

Arrow McLaren SPを先頭に送り出すテクノロジー

Taylor Kiel, Team President | Craig Hampson, Director of Trackside Engineering(ゲスト寄稿者) | 2021年11月17日水曜日

Arrow McLaren SPが好成績でシーズンを終え来季への準備を進めるなかで、テイラー・キール氏(Team President)およびクレイグ・ハンプソン氏((Director of Trackside Engineering)が主要な課題と成功について振り返ります。パト・オワードの5号車が最終戦までチャンピオンシップを争った今シーズンの成功の方程式、そしてドライバーシミュレーションからサイバーセキュリティまで、彼らの仕事のあらゆる側面でAIと自動化をそのように活用しているかを説明します。

パフォーマンスの生命線としてのデータ

INDYCAR予選において、P1とP10の差がわずか0.5秒ということも珍しくなく、マージンがこのようにタイトな場合、準備の微細なディテールが違いを生みます。そして、この準備の基になるのはデータです。あらゆるレースとあらゆる練習走行において、車体に搭載した100個以上の軽量なセンサーおよび数台のコンピューターが膨大なデータを生成し、これらを蓄積および分析してパフォーマンスの最適化を行います。

このエコシステムにはエンジンコントローラ、ギアシフトコントローラコンピューター、そしてクラッチを制御するコンピューターユニットなどが含まれ、これらのシステムがすべてCAN(Controller Area Network)と呼ばれるネットワークを介して相互にやり取りしています。つまり、私達にとっての課題は、このデータから有用な情報を、安全に、そして短時間に得るにはどうしたらよいか?ということになります。

マシン上で起こっていることを何か想像してみてください。おそらく私達はあらゆる手段を使ってそれを測定しようとしているはずです。対気速度、加速、タイヤ温度、その他さまざまな項目があり、現在私達は車体上で1,500以上のデータチャネルを記録しており、それに加えてこれらのデータの組み合わせで作成される838の「数学的チャネル」により、たとえば最小地上高やダウンフォースなどを確認しています。

これは人間だけでは到底処理することのできない量のデータであるため、私達の現在の仕事の多くはこれらの処理を自動化する方法を探ることであり、AIを使って人間には識別できないパターンを見つけ出そうとしています。

ピットイン:タイヤ交換だけではありません

それぞれのマシンには2台のセルラーベースのテレメトリーシステムが組み込まれていますが、それでもリアルタイムで観測できるスループットには制限があります。そのため、練習走行時にはピットインの度にこのデータをオフロードする必要があります。その際、私達が「へその緒」と呼んでいる、通信と電力供給のためのケーブルを差し込みます。

図1:典型的なINDYCARマシンは、エンジンが動いていない状態では自身のバッテリは数分しか持たない

通常のレースでは 2.5GB から 3.3GB のデータが生成されますが、これに加えて車載ビデオと、コース上のマシンの位置を記録するGPSシステムがあり、これらはチームだけでなく各テレビ放映会社にも配信されます。そのため、クラウドとサーバーを使ったハードドライブの両方に大きなストレージ空間を持つ必要があります。このデータはコースサイドにいるチームだけでなく、レース会場にいないエンジニア達もバーチャルで利用できる必要があります。そして最も重要なことは、データがセキュアであり、外部からの干渉から保護されているということです。

サイバーの側面:AIの活用

マシンから送られてくるこれらの貴重なデータは、クラウドにあるものも組織内の他の場所にあるものも含め、私達がデータにアクセスしまたはそのデータを信頼して利用する能力を故意にまたは間接的に毀損する、内部または外部の人間による改ざんの恐れがあります。サイバー脅威環境の変化、すなわちランサムウェアがあらゆる規模および形態の組織を機能停止に追い込んでいる現状 に応じて、どのような攻撃が私達を待ち構えているかに関わらず、備えをしておかねばなりません。

ファイアウォール、Eメールゲートウェイ、その他の境界保護はそのパズルの一部です。しかし、これらのツールは攻撃者を締め出しておくことに重点がおかれていますが、私達はさらなる防御のレイヤーを用意することにより、もし最初の防御をすり抜けて侵入されても、私達に代わって応戦し脅威を阻止することができるような、組織の隅々まで理解している自律的システムを必要としていました。

Darktraceが、あらゆる人とデバイスを基礎から理解し、サイバー脅威を示すかすかな逸脱を識別する自己学習型AIを使って革新的なソリューションを提供しているのはまさにこの部分です。もしランサムウェア攻撃を受けても、Darktrace Antigenaにより24時間、週7日の自動対処が可能であり、精密なアクションによりランサムウェアおよびその他の脅威をマシンスピードで封じ込めてくれます。

ダブルヘッダーで2勝

テクノロジースタック全体に渡って自動化とAIを利用することにより、私達は膨大なデータから意味のある情報を引き出し、マシンの調整やレース戦略のその場での変更という形で決然としたアクションをすばやく実行することができます。

ダブルヘッダーでレースが行われる週末には、対処能力、それも素早い対処能力が試されます。土曜日のレースで見つかったいかなる改善の余地も、一晩で修正して日曜日に適用しなければなりません。 テキサスデトロイトのベルアイルでのレースにおけるパトの5号車の勝利は、どちらもダブルヘッダーのうち後のレースであったということは偶然ではないと確信しています。 人間がテクノロジーと協調して作業することにより、私達エンジニアリングチームはマシンに重要な改良を加え、その場で対処し、最終的に競争に勝つことができるのです。

デジタルフェイク:ナッシュビルの新コースを開拓

今年のINDYCARシーズンにはナッシュビルの新しいコースが含まれており、ドライバーにとってもチームにとっても、エキサイティングであると同時に手ごわい課題でした。パートナーであるChevroletのおかげでドライブシミュレーターにアクセスできたので、私達はバーチャルセッションでマシンのさまざまなセットアップやテクニックを試し、このまったく新しいサーキットをドライバーに学習させることができました。

図2:Chevroletシミュレーターがナッシュビルサーキットのデジタルツインを映し出す

コースはレーザースキャナーを使ってミリメートル単位まで再現され、さらに膨大なデジタルレンダリング処理が施されており、スタンド、フェンス、スポンサーのバナーなど限りなくリアルに表示されています。この「デジタルフェイク」表現は、ドライバーにとってコーナーへの正しいアプローチなどを判断するのにきわめて有用であり、エンジニア達にとってもその出力を使ってコースの特性を知るのに役立ちます。

シミュレーター内のマシンのセットアップは、現実のマシンの設定と実質的に同じです。ばね定数や最低地上高を設定することができ、空力マップが表示され、マシンの慣性や質量特性も把握しています。これはきわめて複雑かつ強力な物理計算エンジンですが、これを使って私達は制御された環境でさまざまな事柄をテストすることができ、フェリックス・ローゼンクヴィストの7号車のシーズン最高のレースの1つにも貢献しました。

このようなシミュレーションは、新しいサーキットだけでなくレース全体にとっての未来の形です。タイヤやエンジンの実物をチェックする代わりに、練習走行をデジタルに再現することができます。ソフトウェアは日々現実に近づいているのです。

今後の展望

Arrow McLaren SPの次なる目標とは?私達は現在McLaren Racingファミリーの一員となったことから、新しい効率化やシナジーが毎月実現されています。この貴重なパートナーシップを引き続き活用することはもちろん、Darktraceとのテクノロジーパートナーシップを通じ、Eメールやクラウドサービスも含めたデジタルエステート全体に彼らのテクノロジーを展開していきたいと考えています。

INDYCARレースにおいて、歩みを止めることは後退を意味します。そして競争は毎年ヒートアップしています。そのための答えは、ビジネスのあらゆる側面において最先端のテクノロジーを利用して仕事を効率化することにあり、それによって最終的にトップに立つことができると、私達はこれまでにない程に確信しています。

Taylor Kiel

Taylor Kiel is a native of Indianapolis, Indiana. His career highlights include starting with Sam Schmidt Motorsports in 2007 in Indy Lights before rising the ranks of now Arrow McLaren SP to president of the team. Kiel has been part of the team’s nine NTT INDYCAR SERIES wins and two Indianapolis 500 pole positions. He was also the race strategist during Pato O’Ward’s first career victory at Texas Motor Speedway in 2021 and led the team to a third-place finish in the point standings.

Craig Hampson

Craig Hampson is a mechanical engineering graduate from the University of Maryland. In Hampson’s career, he was the Indianapolis 500-winning R&D engineer for the team that fielded cars for Ryan Hunter-Reay (2014) and Alexander Rossi (2016) and was at the helm of all four of Sebastien Bourdais’ Champ Car World Series titles and 33 of his 37 career NTT INDYCAR SERIES wins. Now, Hampson is the R&D Engineer at Arrow McLaren SP, and in 2020, he took on an expanded role as the race engineer for Fernando Alonso during the 105th Indianapolis 500. During the 2021 season, he served as the race strategist for Felix Rosenqvist and Juan Pablo Montoya on a limited basis.